Gastr Del Sol : Upgrade & Afterlife
ARTIST / Gastr Del Sol
TITLE / Upgrade & Afterlife
LABEL / drag city
DATE / 1996
TITLE / Upgrade & Afterlife
LABEL / drag city
DATE / 1996
[10-71]。以前紹介した盤"Crookt, Crackt, Or Fly"。Lサイドによるレビューはこちら。異様に評判がよいので、買ってみる。最近では流通量が少ないためか、なかなか手に入らない模様。 David GrubbsとJim O'Rourkeの2人を中心に、彼らの友人関係を動員して作られたエッジが立ちまくりの意欲作。他とはスタイルが前衛よりになっているので、本作から入ると他の滑らかな娯楽作を下手すると誤解する可能性があるので注意が必要。本作で召致されているのは、おなじみの面々だ。M1にはKevin Drumm(参考1)、M2ではGünter Müller、M3にはMats Gustafsson、M4にはJohn McEntireとRalf Wehowsky(参考1)(とMüller)、M7にはTony Conrad(参考1)。いかにも、偏ったGastr Del Solの2人らしいチョイスである。それゆえ、本作の音像やアプローチも分かりやすいかと思う。12分を超えるM7はJohn Faheyの作曲。本作は、このドローンやら無調やらによる緊張感に満ちた塊であるにも関わらず、日本のリスナーには驚くほど傑作として認定されている。予感もあるし、緩急もあるし、何よりも、壮大である。ラストのFaheyの曲でのカントリー的落ち着きが、構成を卓抜にしているし、本作をぐっと地上へとおろす役目を果たしている。なるほど、本作は当時としては、ちょっと遅さもあるけれども、研ぎ澄まされたすぎた鋭角であり、それでいて、リスナーの頭をぎりぎりまでネジ巻きすることもなく、適度な具合にアヴァンギャルドなのかもしれない。それでも、なぜこれほどまでに強く推奨されているのかは不明である。僕としてはやっぱり1stのほうが、ポップスとしてキチンと構築されていると思うわけ。だからといって、本作が、決して僕個人の感想としてひどいわけはあるわけもなく、魂の声と呼応するには適切ななり方をしている。本作をひとつの達成と見るか、瓦解への序章と見るかはそれぞれだろう。僕は後者だと思っている。今、O'RourkeとGrubbsの関係がどういう感じなのか、今後2人が同じステージに立つことはあるのか。僕たちがGastr Del Solを賞賛し続ける限り、その可能性の火は消えないだろう。多くの人間は知らないだろうけど、ばら撒かれることなくひっそりと、彼らの音楽は、音楽を愛する若者たちの核心を桃のようにそぎ落とし続けるだろう。ちなみに、ジャケ写はスイスの現代アート作家Roman Signerによる。