小谷美紗子 : I
ARTIST /小谷美紗子
TITLE / i
LABEL / mcaビクター
DATE / 1997
TITLE / i
LABEL / mcaビクター
DATE / 1997
1836。数少ない同時代で、はまりまくった女性SSW。1stを聴きまくったのは僕が何歳の頃なのか。中学生の頃か。しかし僕たちに金はなく、足早く出された2ndを買う余裕はなかったという。多分、持ってなかったと思う。今やブックオフで500円で手に入るのだ。金を手に入れた今。そんな反比例を噛み締めながら、実家でヘビープレイしてみる。耳をふさぎたくなるような、社会風刺に満ちた歌詞世界に、多少どきどきしんがら、彼女の旋律性に独自を見出す。時代錯誤のフォークシンガー、といえば批判めいたニュアンスも生まれるかもしれないが、表題作の'I'なんかを聴くと、この孤高の天才の先進性を見て取ることは可能だろう。宇多田ヒカルよりも早く、宇多田ヒカルを歌う天才。そんな安易なニュアンスを、小谷美紗子は喜ばないとは思うけれど。良い曲である。今や、ミュージシャンズ・ミュージシャンになり下がり、どういう立ち居地価も分からないまま、今でも何かしらの活動を続けている小谷さん。中村一義とともに、僕たちの失われた90年代後半を鮮烈に輝かせる魂と塊である。