Israël Quellet : Soni Sclavus
ARTIST / Israël Quellet
TITLE / Soni Sclavus
LABEL / sub rosa
DATE / 2009
TITLE / Soni Sclavus
LABEL / sub rosa
DATE / 2009
1695。久しぶりに買ってみたsub rosaの盤は、いつものようによく分からない類の、形容しがたい音世界であった。何も変わらないスタンスで、この消費音楽が加速した時代を生き抜いていくのかまったく謎であるが、ぎりぎりまで、フィジカルな物欲に取り付かれた僕のような俗物を相手にがんばってもらいたいものである。本作は、スイス出身で詳細も調べるのが面倒なほどマイナな男性によるサウンドコラージュ集である。嫁さんの力を借りながら、パイプオルガンを適度に織り交ぜながら、その辺の音の鳴るものどもを突っ込んで、ときにはリズムキープしながらグロテスクな迷宮の中でリスナを困惑させる十全な力を発揮している。誰が好き好んでこのような盤を持ち上げるのか、おそらく永遠に解き放たれることのない謎として庭に埋められているのだろうが、アウトサイダーアートがどうしようもない一手として顕在化する現在において、〈musics in the margin〉というレーベルのシリーズに組み込まれるには別に問題があるわけではないのだろう。われわれは、良い子が好む音楽に耳をそばだてることに慣れているために、良い子がそれをムジークと名指せないものをスルーしてしまう。まあ、それはどこかの誰かがどうしようもない一手としてムジークとカテゴライズして喜んでいるだけという場合もあるのだが。もはや、僕には何かしらの判断を下すほどの黄金の耳を持ち合わせていないのだけれども、過去の自分を愛するように、このどこまでも洗練から遠い盤を思い出と結合させることで、寒い室内を暖める一助とすることにする。