Jeff Mills : Metropolis
ARTIST / Jeff Mills
TITLE / Metropolis
LABEL / axis/tresor
DATE /2000
TITLE / Metropolis
LABEL / axis/tresor
DATE /2000
1040。東に引き戻される間際に、ブックオフのセールで発見し、Lサイドに回収を依頼した曰くつきの1枚。ちなみにそのとき一緒に見つけていたのでこの盤とともに購入を頼んだものの売り切れていたのがBob Dylanの"Blonde On Blonde"であったのは有名な話である。さて、この盤のタイトルを見てピンと来る人は多いと思う。もちろん、手塚治虫でもCim Cityでもなく、このMetropolisの由来はドイツ古典映画の傑作にしてSF映画の金字塔とされるFritz Langの1926年の同名映画に由来している。この勝手に映画にインスパイアーされるというか、曲をつけるという行為はベルトフの『カメラを持った男』に対して、Cinematic Orchestraが1枚盤を作ったことが思い出されるのは僕だけではないだろうし、それ以前にも多数の実践があったろう。このようにある人工物からある種の着想を得るという事態は、古典主義とロマン主義をつなぐ重要なバンドであるのだが、それはまあ置いといて、Jeff Millsと映画との関わりいうのを考えると、最近で思い出されるのはもちろんBuster Keatonの長編第一作"Three Ages"(邦題『キートンの恋愛三代記』)に対するものだろう。ちなみにこれは1923年の作品らしいがJeff Milsという存在が21世紀におけるという条件をつけてかなり典型的な古典主義的傾向を持っているといえるかもしれない。ある種、かつての古代人崇拝にちかいものがある。しかし実践に移し変えられるときは、近代人的実践になるわけだ。つまり新旧論争という画期を21世紀において、類似関係を保ったまま移行し、両者をもっとも表面的な意味での弁証法によって一つにしたのがこの盤ということになるのである。今更Jeff Millsを形容する必要もないだろうから、この盤でもだいたい彼の作風でクオリティも保持されているから、映画とあわせて聴いてみるといいかもしれない。映画史のなかでとらえられる多くの古典映画があるけれども、そろそろ受容史的アプローチが登場してきているはずだから、この盤もそのなかに加えてやってください。それにしても、ジャケが文字というのも映像表現としての映画との関連で考えると倒錯した事態ではあるな。