The Host : S/T
ARTIST / The Host
TITLE / S/T
LABEL / planet mu
DATE / 2012
TITLE / S/T
LABEL / planet mu
DATE / 2012
2369。季節は4年に一度のスポーツの祭典。あとはいまだに時代錯誤にも部活がテレビで中継される夏。状況は悪化しているようで、しかしそれに対応できる程度に文化装置は成熟していない。ぼくたちの世代が文化的な同行へとアンテナを張った時期はたかだか20年程度である。大きく変わったともいえるし、その内実、何も進捗がないといっても別に不思議ではなかろう。フィジカルな販路から音楽が解放され、音楽はより多様性を進んだのか。たとえばインディーレーベルへの福音として。しかしそこに大きな物語がない以上、ただの泡が大量発生したとしてもそれを確実につかみ取ることは困難だろう。planet muはそんななかでも、確実に大きな物語、たとえばUKのクラブカルチャにおけるシーンというようものを括弧にくくり続ける。その一方で、Mike Paradinasの遺伝子を植え付けられているともいうべきフォロワーたちが群雄割拠でその中に取り込まれては、個を主張するにはあまりにも弱い存在だとしても、そのレーベルのなかでふさわしい音を鳴らしている。Barry LynnいよるプロジェクトであるこのThe Hostもそのようなふるまいをしているのだと思う。Barry Lynn名義でも、あるいはさらに以前にはBoxcutter名義でもplanet muからリリースのある彼は、レーベルのカタログをただただ豊かにするかのように名前を変え、本作をリリースした。この1枚をもって、彼が歴史に名前を刻むことなどまずありえないが、その電子音が作るリズムパターンや、高音の広がりはあまりにもらしい色彩を帯びているように思う。このレーベル内においては、凡庸であるがゆえに、必然的にすら思える感性。インターネット時代において、音楽の大きな物語はあだアップデートされない。マイナーチェンジの潮流はさらにこまやかに進捗はしていくだろうが。だからといって、今でもplanet muが人の心をとらえて離さないかといえばそれはわからない。もしかしたら、もう若者は誰も聞いていない音楽なのかもしれない。そもそも、誰も音楽など聞いていないのかもしれない。