H.R. : Human Rights
ARTIST / H.R.
TITLE / Human Rights
LABEL / sst
DATE / 1987
TITLE / Human Rights
LABEL / sst
DATE / 1987
2362。80年代後半、レーベルはオルタナ前史のなかで、絶頂を迎えた。本作がリリースされた1987年にはDinosaur Jr.の2nd"You're Living All Over Me"や、Sonic Youthの"Sister"がリリースされている。H.R.ことPaul D. Hudsonは、UK出身。ハードコア分脈のなかで、レゲエをルーツ・ミュージックとしていたようで、本作でもその影響が色濃く出ている。H.R.は70年代後半にデトロイトで結成されたハードコアバンドBad Brains(参考)のボーカルとして知られていて、解散と再結成を繰り返し、その活動は最近でも続いているようなので驚きだ。メンバー全員がアフリカ系の肌色だったことで注目されるが、ジャズやフュージョンを素地とし、その後はミクスチャバンドの先駆けとも言われている程度に重要なバンドだったのはいうまでもない。デトロイトで彼らに憧れたキッズたちが、Fugaziになったわけだ。そんなバンドのフロントマが作るわけで、一筋縄ではいかないのは確かで、ダブダブしい響きもありつつ、レゲエえのリスペクトも忘れないところではあるが、いかんせん80年代というのは下手すると異質な技術によって彩られた時代である。軽薄な録音と、うそ臭いリズムパートの音その他が鼻につくわけだが、それでもインディレーベルからリリースされたマイナー作として考えるには有り余るアイディアとポップスがある。M6'No Return'の異様な耽美さを備えた曲なんて、下手したら当時の日本でも受けるレベルのキャッチーさがある。イントロでも間奏でもキャッチーに仕上げていくあたりが、日本でも評価されてしかるべき作家だったのではないかと思う。マイルドにマイルドを重ねたFrank Zappa、とでも言おうか。音はダサいけど、それは時代。面白い盤だと思う。ドラムをたたいているのはBad BrainsのオリメンでH.R.の兄弟でもあるEarl Hudson。