The Raincoats : S/T
ARTIST / The Raincoats
TITLE / S/T
LABEL / rough trade / we three
DATE / 1979 / 2009
TITLE / S/T
LABEL / rough trade / we three
DATE / 1979 / 2009
2247。以前紹介した盤"Extended Play"。ようやく購入。印象的なジャケからかもし出される名盤感がえぐい。ちなみこの絵は文革をテーマに9歳の中国人少女Pang Hsiao-Liが描いたものだという。なんというパンクな。ご存知のようにThe Raincoatsはイギリスで1977年に結成されたニューウェーブバンド。。メンバーは Ana Da Silva(ボーカル、キーボード、ギター)、Gina Birch(ボーカル、ベース)、Palmolive(ドラム)、Vicky Aspinall(ボーカル、ベース、ギター、ヴァイオリン)。ドラマーのPalmoliveことPaloma McLardyは、パンクからニューウェーブ界隈では重要人物で、The Clashの Joe Strummerと付き合っていた。当時The ClashのPaul Simononに名前を聞き間違えられたことで、Palmotiveを愛称としたらしい。その後Sid ViciousらとThe Flowers of Romanceを結成し、The Slitsへ移行し、1stを出す前にこのThe Raincoatsに流れ着いたという話。つまりThe Raincoatsってのはかなり正当な(しかしもっぱら傍流だが)立ち位置にいたというわけだ。本作が出ることにはメンバーが全て女性。楽器も弾けなかったというありがちなパンクの初期衝動の塊だったに違いない。冒頭からヘロヘロの演奏が始まるけれど、それが後半に行くに従いまとまりをみせ、時には斬新な瞬間を見せはじめ、その衝動が見え隠れし始めたころにはもうとりことなっていること受けあいである。ちなみにリイシュー盤のM1は彼女たちの1stシングルがボートラとしてぶち込まれているので注意。この曲は亜流The Sex Pistolsのそれ、というかパンクのそれで、雑味がなく単純に聞ける。しかしその後のアルバム全体は、もう魑魅魍魎のヘタウマとアイディアのごった煮です。彼らがニューウェーブへと足を突っ込んでいるのは、勢いで押し切らずに、世界音楽的なリズムを取り入れ、ヴァイオリンで呪術的な演出に成功しているからと感じる。それらはしっかりと90年代を圧倒的に先取り、準備していたわけだ。M9とかすごくかっこいい。Kurt Cobainが本作を自身が選ぶベスト50の一角に入れるにはそれ相応の理由があるわけだ。The Kinksの'Lola'がカバーされていたりと、方向性はいつだって頓挫している。それらをかげで演出していたのが、アメリカインディーのゴッドファーザーこと、Red KrayolaのMayo Thompsonだったりするから、世界って狭いですよねという話。当時、rough tradeのオーナーGeoff Travisと交流があったようですね。Mayoがかつて所属したPere Ubuもrough tradeからリリースしていたし。それはさておき、このあまりにもトータルな1枚は、傍流のなかでも隠れた名所となるべくしてなり、これからもしっかりと受け継がれることでしょう。このジャケUTにならないかなぁ。文革Tシャツ。あらゆる女性活動家のBGMとなっているはずなのに、そうでないのが不思議だ(彼らのバンドメンバー募集の文句は"female musician wanted: no style but strength"だったという)。男女とかややこしいことは抜きにしても、バンド名、その他もろもろかんがみて、圧倒的に神々しいのは間違いない。名盤ですわ。