Frank Zappa : Studio Tan
ARTIST / Frank Zappa
TITLE / Studio Tan
LABEL / discreet
DATE / 1978
TITLE / Studio Tan
LABEL / discreet
DATE / 1978
2242。ワーナーに移籍して、壮大なことをぶちまけようとしながらも却下され、Zappa先生が投げやりになり、ばらばらとリリースされたという誉れ高き1枚。糞みたいにダサいジャケットがZappa先生の承認を受けていないということは名誉のために付け加えておくべきだろう。もう少し説明すれば、先生自らが本来4枚組LPとして発売されるはずだった幻の作品"Lather"(aはウムラウト)の全編をローカルラジオ局で大放出したというかっこいい逸話につながるわけだけど、本作がその大作の1部というわけだ。先生の言い分が正しいのか、パッケージとしてコンパクトにすることで継起的に収入を得ようとしたワーナーが正しかったのかはわからないけれども、作家の意向が無視されることにより、そのモチベーションやら評価が下がるというのは仕方がない話。ジャケも糞ダサいしね。ワーナー分割3部作である本作、"Sleep Dirt"、"Orchestral Favorites"の全てが同一のイラストレータの作画で、その人Gary Panterさんは、wikiによるとポスト・アンダーグラウンド・ニューウェーブ・コミックの代表格なんだそうな。分かりやすくいえば、 Art Spiegelman編集によるアングラお洒落コミック雑誌"RAW"とかその辺の作者ですね。内容も、おふざけのようなブロークン・ワードとすっとぼけたサウンドメイキングによって、Zappa先生らしさ全開というかたちになるわけだけど、決して本作から手を出してはいけないというのは警告しなければならないだろうね。ただのぶっ飛んだ構成で、ポップス本来の快楽を保証してはくれないから。それによって本来のZappa音楽を取りこぼすとすれば、それはその人の人生の大いなる機会損失につながることでしょう。白眉はもちろん20分に及ぶ壮大な冒頭のナンバー'Greggery Peccary'。どういう着想からこのような構成を描こうとするのか精神状況を疑わざるを得ない狂ったZappa流オーケストラ風音楽が展開されている。シャブ中の妄想ですら打ち勝つことが出来ないでしょう。それでもなお、世間一般という曖昧で平板な空気のなかで、自分のアイデンティティを強固に確保しようと躍起になっているかわいそうな子どもたちにはうってつけなのかもしれない。それはもう最高なほどに。それはそれとしてM1を過ぎ去れば、70年代のさわやかな風(Todd Rungrenなどを想定においている)を演じるような小曲「海へ行こうよ」をはさみ、七転八倒らしさ大爆発のジャズロックへと展開していく。このあたりの力技は本当にすさまじいことです。ただこれはオリジナルLPの構成であり、Zappaさんが手直しするCD盤ではその順番を入れ替えています。個人的にはLP盤のほうが馬鹿っぽい並びでよかったのではないでしょうか。先生すみません。ラストはZappa先生の唸るギターソロとGeorge Dukeによるキーボードソロが最高な超絶技巧インスト。ここまで聴いて、あれ、これって、、、名盤じゃねぇの??という幻視に襲われてしまうというわけです。なんという状況的が許した魔術なのでしょうか。不思議ですね。ファンの支持も結構高い本作なのでした。僕がこのブログを初めてZappa先生の諸作をより広く聴こうとしていたときに手を出したのが、まさにこのワーナー時代の音源たちでして、その手に負えなさに辟易としましたが、僕も少し成長したようです。あるいは耳がますます腐ったか。