Aphex Twin : 26 Mixes For Cash
ARTIST / Aphex Twin
TITLE / 26 Mixes For Cash
LABEL / warp
DATE / 2003
TITLE / 26 Mixes For Cash
LABEL / warp
DATE / 2003
2250。過去盤レビュー。本作を廻るRichardの言説は、色々ある。タイトルがあまりにもストレートで清々しい。ただ、最近のサンクラのコメントでは、このタイトルは別に何か奇をてらったわけではなく、ただRichardが現金支払いだったとかなんとかで、しかもタイトル自体もwarp側でつけられたという話。事実はどうであれ、よっぽどリミックスした相手から反感を買ったことであろう。もちろん本作の中に並べられている楽曲群は、最高の仕事が施されることであえてリミックスするとはどういうことかを突きつけてくるわけだが、その原曲自体、あるいは作家自体にRichardが敬意を持っていることが了解済の場合も多い。レーベルメイトもたくさんいる。必ずしも純粋に仕事でやったわけではないだろうし、彼がインタビューで答えたように(出典は忘れたがその言説は本作リリース時に確かに呼んだ記憶があるし、現在でも彼のリミックスワークについて常に付記されている)、「クソみたいな曲しかリミックスしない」だとか、「クソみたいな曲を世の中から減らしたい」というような動機は、彼一流の自己演出であろう。それでもわれわれリスナーがそれを受け入れてしまうのは、Aphex Twinに比べたら、そりゃあらゆる曲はクソに過ぎないだろうと首肯するからだ。それに異論はない。本作に並ぶ作家たちは、望んでRichardに依頼を出し、新曲を書いてもらったようなものだとおもう。なんと贅沢な。そして魔法を施された曲には多様性がある。盟友たちという意味では、Seefeel(参考)、Gentle People、Cylob名義でリリースの多いKinesthesia、Baby Ford、DMX Krew(参考)、友人Wagon Christといった面々。国内の同時代人からの依頼としては、割と売れたメジャー関係ではUKデジロック系のJesus JonesやSaint Etienne、90年代随一のUKコミックバンドThe Mike Flowers Pops、トリップポップの覇者Meat Beat Manifesto(参考)、そしてオルタナ系ユニットCurveなんかがいる。ヨーロッパ系で言えばほかに、ドイツヒップホップのパイオニアDie Fantastischen Vierや、ドイツ系インディーのPhillip Boa & The Voodooclub、あるいはフランクフルトのハードコアテクノDJMescalinum Unitedのアンセム曲'We Have Arrived'なんかを手がけている。おそらく偉大なる先達として808 State、obscureのGavin Bryars、あるいはコラボが絶えないPhilip Glass(参考)の名前もある。そしてわれわれ日本人から人気がある証として飯村直子らによる女性ロックバンドNav Katze、高橋幸宏と鈴木慶一らによるThe Beatniks、Nobukazu Takemuraなんかがと並び、まじかよと思わせるBuck Tickの曲までもある。Nav Katzeも世代的によく知らないからもしかしたらまじかよな取り合わせなのかもしれない。いずれにせよ、悪魔的な仕事が為されているから原曲はまさにまったく行方不明だ。リミックス以外にも、本人名義の2曲(Windowlicerのアシッドミックスと、SAWのdisc1のM2)とNine Inch Nails用につくった2曲も収録されている。この混沌とした並びが全て天才の魔法が施され、見事に一貫した最高の流れのもとで、われわれに与えられているのだからそれはそれは最高なわけで、発売当時、CDが擦り切れるほど聴きまくったのは言うまでもない。その理由としては、本作以後、Aphex Twin名義でまとまった仕事を効けるのは"Syro"まで待たなければならなかったから。AFX名義でのもろもろのまとめとか、Analordの一部楽曲とかではあったんですけどね。この絶えることない幻想ポップネスは今聴いても薄れることがない。僕たちの時代の音楽といえば、Aphex Twinが代表であり、音楽の力が薄れた今でもそれは変わらない。音楽と、笑いと、天才と、音楽と、音楽と。それらは全体としてアティチュードであり、力を持つ。だから僕たちはまた待っている。馬鹿見たいに。信じている。 抽象的な話は別にして、BeckやらDJ Pierreやらのリミックスもまだまとめられていないので、その辺もよろしくお願いいたします。