Bud Powell : The Scene Changes
ARTIST / Bud Powell
TITLE / The Scene Changes
LABEL / blue note
DATE / 1959
TITLE / The Scene Changes
LABEL / blue note
DATE / 1959
2332。ジャズ名盤探訪。黄金期のblue noteより、魔術的ピアニストBud Powellさんの人気盤ですね。伏し目がちにピアノへと傾倒するPowellさんの後ろからひょこっと子どもが顔を出しているジャケットが印象的です。Bud Powell(ピアノ)、Paul Chamers(ベース)、Art Taylor(ドラム)のトリオで、磐石です。本作は、blue noteより50年代頭からリリースされ続けた<The Amazing Bud Powell>シリーズの5作目で、ジャズが好きな人からすれば、数多のミュージシャン・ナラティブにのっとって薬物やらアルコールやらで統合失調症ライクとなり、すでに輝きを失っていたという。それでも彼にはジャズしかなかった、といえば聞こえが良いが、本作がどうにも日本で人気が高いというのも不思議な話である。もちろん聴けば分かるが、やや乱れたフレージングだとしても、全曲オリジナルで勝負するという意気込みも含めて、それ相応の迫真のプレイがモダン・ジャズの灯火を赤く燃え上がらせているように感じる。有名なのは、エキゾチックな響きがあるM1の邦題「クレオパトラの夢」。指が付いていっていないという感想はさておき、ChambersとTaylorの着実すぎる下支えがトリオとして十全に魅力的だと思う。BPMは決して落とさない。バラードで勝負するようなことはしない。疾走する統合失調症である。ピアノ、ベース、ドラムというトリオ形式というのも、Bud Powellが築き上げたという。リズム隊としての左手を解放し、ジャズピアノはさらなる自由へと到着したという次第。Bud Powellといえば、「唸り声」が有名だが、本作ではそれもあまり気にならない。それを期待して針を落とした部分もあるが、本作ではノリ程度の感覚で控えめだと思う。その後Powellはニューヨークからパリへと渡り適度に迎えられた。しかし、故郷を忘れられず、帰ってきて、すぐに死んだ。41歳だった。