Half Japanese : The Band That Would Be King
ARTIST / Half Japanese
TITLE / The Band That Would Be King
LABEL / 50 skidillion watts
DATE / 1989
TITLE / The Band That Would Be King
LABEL / 50 skidillion watts
DATE / 1989
2331。1975年に結成され、現在まで活躍しているという生きる伝説(なのかかろうじて食いつなぐパンクキッズなのか知らないが)、Fair兄弟による1枚。7thぐらい。メリーランド州という、アメリカはミッドウェスト出身。面白ジャケットですすね(このアートワークはDavid Fairが担当)。兄弟での活動はいつごろからか解消し、Jad Fairを中心に地下プレイヤーたちを巻き込みながら展開していくことになります。Half Japaneseが日本でも名前が知られているとすれば、Nirvanaの"In Utero"ツアーの一部に帯同したこと、そしてなによりKurtが死んだときに着ていたのがHalf JapaneseのバンドTだった、というオカルト話によってではないでしょうか。もちろんアメリカのジャンクバンドの系譜としては、現在までの足跡も含めて大切な人たちなのでしょうけど(KurtのTシャツ話でいえば、Daniel JohnstonとJad Fairはコラボ盤を出しています)。本作のメンバーはJad(ボーカル、ギター)、Mark Kramer(オルガン、ベース)、 The Velvet MonkeysのDon Fleming(ボーカル、ギター)、 Mr. J. Rice(ギター)、 Scott Jarvis(ドラム)、 Rob Kennedy(ベース)。Don Flemingといえば、メジャーデビューしたSonic Youthとの仕事をはじめ90年代では割と頻出する90年代オルタナティブ裏方ヒーローですね。KramerもまたGalaxie 500などとの仕事で知られる地下ニューヨーク・シーンでは著名なプロデューサーで、本作も録音とプロデを手がけています。Half Japaneseが万全に抱える90年代前後の時代背景が伝わってきますね。さらに言えば、本作ではおそらくKramer周辺の人脈からでしょうか、Fred Frith(ギター)やJohn Zorn(トランペット)、アメリカン・フリージャズ・ロックの雄CurlewのGeorge Cartwright(トランペット)なんかも一部の曲で参加しています。と、周囲を固める人たちがとっつきにくい部分もありますけど、バンド自体がやってるのは、典型的なアート・パンク(なんだそれ)で、小難しさを偽装しつつも、ノリやすく、ジャンクでしっかりとした構成のもとでヴェルヴェッツの魂を引きずるという按配です。悪くない。全30曲。本作で最長の2分40秒からなるM24なんてもろだしね。名曲です。この曲作っただけでも十分じゃないでしょうか。他の諸作が気になり始める。Jadさんは、チューニングを否定したギタリストの第一人者として知られる存在で、かっこよい響きを出していると思う。まさにSonic Youthの影に埋もれたB面バンドですね。本作のタイトルも意味深です。アートパンクってのは本当に素敵です。ちなみに正式名称が50,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000 Watts Recordsというレーベルは、Fiar兄弟による自主レーベルで、dutch east india tradingを通して流通していた(homesteadとかのディストリビューターとしておなじみ)。かられは当該レーベルからフル盤を3枚リリースしたが、本作がその最後となった。