大森靖子 : マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー
ARTIST / 大森靖子
TITLE / マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー
LABEL / avax
DATE / 2015
TITLE / マジックミラー / さっちゃんのセクシーカレー
LABEL / avax
DATE / 2015
2306。以前紹介した関連盤『トカレフ』。「きゅるきゅる」以来、およそ1年ぶりのメジャー2ndシングル。ある種上出来な道筋のなかで、エイベックスの後押しのもと、NHKを中心に、適度にテレビなどメディア露出も増えて、適度にライブをして、適度に話題を振りまきながら、彼女が目指すトポスへと、成功なのか失敗なのかわからない歩幅で進んでいる。そんななか、両A面である本作も、さほど話題になることなく、オリコンの順位も全作より振るわず、それを根拠として、路線が違うのではないかという疑念をフライパンとともにぐちゃぐちゃに加熱し、とにもかくにもやるっきゃないな状況で、音楽をやることが果して可能なのか不明である。「マジックミラー」の照れるほどのジェイポップという概念への寄り添いは、全体的な言葉の精度を中性化することで、彼女の存在がわりかし普遍化しようとしている証左であることに否定をはさむことはない。それを批判するのは、自分だけの特別からの解放を拒絶しているに過ぎない。言葉の抽象化こそ、マッスへと刺さる方法論でもっとも大切なやり口だと思う。その中でも
私の有名は君の孤独のために光るよ
というフレーズを、最高のジェイポップ的タイミングでもって繰り出されているだけでも、良かったのではないかと思う。少なくとも、彼女は、なんとかかんとかして、名曲を繰り出そうとしていた。王道のなかで。これが最後の気力を振り絞った結末でないことだけを、ファンは願うしかない。「さっちゃんのセクシーカレー」はジャンプに連載されている『食載のソーマ』のエンディングにも採用された。初めてのOAのときにデモ音源が流れるという話題づくりも出来た(本人は不本意だったとリアクションした)。それでも、その事象が広く届くようなことはない。ささやかな物語のパセリにもなれない。そんな状況のなかで、末尾でなんとかCメロへの展開を盛り込む気概には頭が下がる(そして、このパートに限ってはデモのほうが良い)。とにかく、大森さんはいつだってなんとかしようとしている。そして、3曲目「私は悪くない」。この根源的な自己否定と自己肯定のアウフハーベンによって、立ち位置をふわつかせることが、果たして現在の戦略との親和性があるのかは疑問だが、「生きていいって言って」という反アシュラ的な展開と音楽がある。それはそれで良いのだとおもう。コレまで特典で、こちらが本編かといわんばかりの音源をぶち込んできたが、今回の特典はただのおしゃべりファンディスクであることを付記しておく。彼女が音楽をあきらめていないということを信じている。
私の有名は君の孤独のために光るよ
というフレーズを、最高のジェイポップ的タイミングでもって繰り出されているだけでも、良かったのではないかと思う。少なくとも、彼女は、なんとかかんとかして、名曲を繰り出そうとしていた。王道のなかで。これが最後の気力を振り絞った結末でないことだけを、ファンは願うしかない。「さっちゃんのセクシーカレー」はジャンプに連載されている『食載のソーマ』のエンディングにも採用された。初めてのOAのときにデモ音源が流れるという話題づくりも出来た(本人は不本意だったとリアクションした)。それでも、その事象が広く届くようなことはない。ささやかな物語のパセリにもなれない。そんな状況のなかで、末尾でなんとかCメロへの展開を盛り込む気概には頭が下がる(そして、このパートに限ってはデモのほうが良い)。とにかく、大森さんはいつだってなんとかしようとしている。そして、3曲目「私は悪くない」。この根源的な自己否定と自己肯定のアウフハーベンによって、立ち位置をふわつかせることが、果たして現在の戦略との親和性があるのかは疑問だが、「生きていいって言って」という反アシュラ的な展開と音楽がある。それはそれで良いのだとおもう。コレまで特典で、こちらが本編かといわんばかりの音源をぶち込んできたが、今回の特典はただのおしゃべりファンディスクであることを付記しておく。彼女が音楽をあきらめていないということを信じている。