Aphex Twin : Selected Ambient Works Volume II
ARTIST / Aphex Twin
TITLE / Selected Ambient Works Volume II
LABEL / warp
DATE / 1994
TITLE / Selected Ambient Works Volume II
LABEL / warp
DATE / 1994
2303。語る余地のない名盤。Aphex Twinのなかで、学生時代には本作がAphex Twinのなかでもっとも良い1枚だと断じるぐらい本作に傾倒した。それは、何かツウっぽい感じもあったし、そして実際に最高の仕上がりだったように思う。2枚組というお得な枚数ということで、決して何でも取り揃えることが出来ない時代であるからこそ、買い揃えるときには、より多くの曲数を獲得すべく、本作を選択したというのはありがちな話。ただ、その選択をした当時の僕の選択は間違っていなかったと思う。だから。今再び活動を再開し、それがいつ途切れるか分からないこの状況において、とりあえず追いかけようと思うお金のない学生の諸君、本作を手に入れればよいと思う。今なら"26 Mixes For Cash"もあるけど。それはそれでいいんだけど。いや、さらに言えば、今はyou tubeの時代だから、何でも聴けてしまうのか。なんという所与の時代。それはそれで良いが。もう何でもよいが。"Selected Ambient Works 85-92"という傑作もあるんだけど。というか、もう全部傑作だから、全部聴いとけばいいんだけど。あふれ出る創作意欲と書き溜めた曲たちを一気に放出するというのは、現在のサンクラでのやり口と似ているようだが、当時はまだ市場としても成立していたわけだから、飛び道具的に発表する必要もなかった。名義的には2ndにあたる。裏ではAFX名義で、まさに2015年に、再びきまぐれした名義で、やりたい放題フロアをあげていた。Aphex Twinが、決してそんあフロア・パーティーでの風来坊で終わらなかったのは、確実に1stとこの2ndで見せたあまりにも思慮深い1面からであるし、引っ込み事案でナイーブなベッドルーム・キッズたちから集金に成功したのは間違いなくこの道であった。もはや名義的な使い分けなんて、Richardさまにとっては何の基準もなさそうだから、もう同列に扱えばよいし、現在ではすべて、ひとつの圧倒的才能を持つ音楽家の出力であるという理解でもなんら納得できないことはない(といいつつ、感覚的に、本作はAFX名義で出されないだろうとは思うが)。このシリーズは本作で打ち止めになったけれども、彼の失われることのない詩情の源流というか、全てはこのシリーズに吹き込まれている。本作では、それが2時間以上にわたる。恐ろしい。その詩情は、きらめきを抑制し、ぐっとコールド・アンビエントとして、あるいはよりアンビエント的になった。それでも強烈な詩情をたたえてしまうのが、ポップスたるゆえんである。それはBrian Enoの提唱したアンビエントとはまた違うものかもしれないが、すでにジャンル化した音楽スタイルにおいてだけではなく、思想的に聴けばその延長上にある(Brian EnoとRichard D. James、この2人の確固たる音楽家のつながりは自明すぎるが故に、その史実的な連なりは良く分からない)。先ほど言ったように、もれ出るポップネスという感傷が、それを拒むという見方もあるだろうけど。音数は少なく、ビートレス。それだけで、現在のAphex Twinとは違うとわきに置いてしまってはいけない。だまされなければならない。核心とは装飾を剥ぎ取らなければ分からない。現在、Richard本人が、これをどのように考えているかわからないし、このような実践は、現在では"Computer Controlled Acoustic Instruments PT2 EP"なんかに取って変わられているのかもしれない。でもそれでも良い。なぜなら僕たちには本作がきちんと残されているのだから。何度聴いても変わらないクラシックとは本作のような存在をいう。そして2015年、僕たちはもうしばらくRichardさまの気まぐれで、音楽を愛していられるだろう。