Sufjan Stevens : Carrie & Lowell
ARTIST / Sufjan Stevens
TITLE / Carrie & Lowell
LABEL / asthematic kitty
DATE / 2015
TITLE / Carrie & Lowell
LABEL / asthematic kitty
DATE / 2015
2283。以前紹介した盤"All Delighted People EP "。イリノイから10年。その10年をわれわれは噛み締める、、、程度に偉大なる作家として認知されているのかわからないけど、Sufjan Stevensはまがうことなく、インディー界の歌モノの良心である。そしてそれはほんの一面にしか過ぎないことを、そのヴァラエティに満ちた作風で証明してもいる。そして、10年たった。暗く沈みがちな旋律は、今やなきElliott Smithの音楽のように、透明をたたえ、宗教的ですらある(実際的に、宗教的な背景があるのだろうが)。ここには、暢気も奇知もないように感じる。おどろかしてやろうという気概もない。ただただ歌へと注力し、そしてその真剣さにわれわれも実直になり、撃たれる。良い曲を書こうという真摯さが、穏やかさを明かしている。pitchforkですらそのレビューでイリノイを越える点数を付け"Sufjan Stevens' new album, Carrie & Lowell, is his best."と書き始めるしかなかった1枚が本作なのである。姿を消した母キャリーの死に直面し、その事象に真摯に向き合うことが、本作の核心を作り上げている。あまりにも真摯に、そしてパーソナルに向き合う結果によって、それが音楽へと変わる。現実の切実さが、音楽へと変わるのである。そして、母の再婚相手であるローウェルは音楽家としてのStevensの盟友でもあった。asthematic kittyの共同設立者である。その錯綜した関係のもと、本作は、奇抜で壮大なアイディアで勝負するのではなく、実直なものとして実現したのであった。アコギとピアノと、ほんの少しの味付けに、素晴らしい歌声と、ブシ感を備えた旋律でもって、何の意外性もなく、淡々とすすめられる本作に対して、僕たちは、その複雑な背後関係などは、家族でも友達でも、その一歩先の人間関係よりも圧倒的に遠い作家のパーソナルな現実などには触れようもない中でただただ音楽だけを提示されるのである。その作家の核心に満ちた音楽を、作家と切り離し、その上で、核心の音楽を投げかけられるのである。届けたい相手には届かないのに。しかしわれわれに届けられた天才の音楽。僕たちは頭を垂れるのである。