V.A : John Beltran presents Music For Machines
ARTIST / V.A
TITLE / John Beltran presents Music For Machines
LABEL /delsin
DATE / 2014
TITLE / John Beltran presents Music For Machines
LABEL /delsin
DATE / 2014
2274。失われたアンビエント風味のピュア・テクノの良心をたたえながら、エキゾチックな作風で遊びも見せるJohn Beltran。r & sから1995年に1stをリリースし、続いてpeacefrogから名盤の誉れ高い"Ten Days of Blue"を繰り出しました。名だたるテクノゴッドたちと肩を並べるほどには知れ渡っていない感がありますが、それでもdelsinから選曲集を出せる程度には、有名な作家だということが分かります。タイトルもヒロイックで、どんなにあほなフリをしてもEnoの"Music For Airport"を想起しないわけにはいけない。インナースリーブには、人間の技術から推察される未来予想図の限界である「技術的特異点」を提唱したアメリカの技術者レイ・カーツワイルの言葉を引用している。いわく、「私は発明家だ。私が長期的なトレンドに興味を持つようになった理由は、発明inventionとはそれが完成した世界で意味をなすからだ。発明が始まった世界では、意味をなさない」。訳があってるかわからないし、分脈から切り離されている以上、意味を汲み取れているかは不明だが、おそらく、この発明が「機械machines」と響きあっているだろうし、そして、その予言はこのコンパイル集に集められた有象無象の作家たちの全体性に関わるように思う。Beltran自身はタイトル曲でもあるM5で壮大な広がりを持つ曲を披露しているにとどまっているが、残り17曲も、さすがBeltranがつばをつけているだけあって、有名無名とはず、まさに「完成した世界」で鳴る音楽が展開されている。かろうじて分かるのはM7のKirk Degiorgioぐらいか。As One名義(参考)では90年代を適度に流布したが、Beltran同様に、なかなか直球で日の目を見ない作家だと思う。あとはmonikaからリリースのあるNatalie Beridze女史とか、delsinをベースに近年自身のレーベルも含めてリリースラッシュを続けるMick Chillageとか、そんな感じ。一応自分の備忘録もかなえて、参加作家を並べておこう。soundcloudやbandcampを主戦場に活動している作家たちもいる。Winter Flags(Gacha Bakradze名義でも参加)、Reinehr、Sons Of Melancholia、Blair French、David Elpezs、Dennis Clifford、Robert Perry、Merrin Karras、Greg Chin、Vincent Volt、A2B2C2。彼らの楽曲はどれもこれもビートレスで作家性を剥ぎ取られ、どこを切ってもその無名性から来る環境への溶け込みを感じさせる。たおやかなドローンで、旋律すら主張することを忘れるという類の。一度確立された、完成した世界のなかで、この音楽は、技術的得意点に達したものとして、捨て去られることはなく、空間に響き続ける。そんな気分。Beltranはビート有るやつを1枚欲しいところです。