サニーデイ・サービス : 東京
ARTIST / サニーデイ・サービス
TITLE / 東京
LABEL /ミディ
DATE / 1996
TITLE / 東京
LABEL /ミディ
DATE / 1996
2140。青春の過去盤レビュー。やばい。M1の標題曲「東京」を聴いただけで、わけもなく涙腺がゆるゆるになった。何これ。どういう状況。僕の思い出のジェイポップを彩るのは本当に少ない個人とグループに制限される。そして、はまったらきちんと大学くらいまでは追いかけてリリースされた盤は全て入手したと思う。サニーデイ・サービスもその一。本作M5に収録されている「あじさい」をFM802で聴いて以来、大好きだったが、たしかLサイドが先にアプローチをかけていた気もする。本作は、直球の名盤タイトルを携えた90年代の代表する1枚である。誰がなんと言おうとわれわれの名盤だ。曽我部恵一(ボーカル、ギター)、田中貴(ベース)、丸山晴茂(ドラム)という3ピースバンド。2000年に一度解散するも、2008年に再結成した模様。今はどんな感じなのでしょうか。曽我部さんのたまらない声のよさに誰もが劇的に濡れちゃうわけだけど、顔を見たときは誰もがえっと我に帰ってしまうという。そしてやっぱり曲が良い。70年代のアヴァンなロックをベースに引きながら(もちろんはっぴいえんどあたりを想定してる)、メインストリームではない層への訴求をし続けていましたね。この盤を聴きながら、たとえば下北沢を歩くっていう、もてない男の典型のような大学時代は送っていませんが、それでもそのような状況は夢想するに足るシーンであるし、決して悪い振る舞いではないだろう。そして今の季節は思い出の曲、ストリングで始まる超絶名曲「あじさい」がうっとおしい湿気を、しっとりと肌を潤わすうるおいに変えてくれる。サニーデイ・サービスは、決して90年代的フォークの体言ではないけれども、若者とシティ感覚からなぜか創出される郷愁という点ではフォーク性を備えてないわけでもない。俺は何を言ってるんだろう。フォーク性ってなんだ。サニーデイ・サービスには、変革への意志も何もないんだけどなぁ。もちろんそれがフォークの形式性かというとそーでもないと思うけど。90年代という浮かれた状況からの失墜において、音楽形式は瓦解しつつも、あほみたいにマーケットは活況を示していた何がなんだかわけわかめな時代だ。そのなかで、自分たちなりに状況を確保したサニーデイ・サービスのポエジーは、確実に今の若者には、過去の、大過去の、遺物として響くかもしれないけれど、それはそれとして、名盤は語り継がれるから、聴く機会もあろう。聴けよ。