Radiohead : The King Of Limbs
ARTIST / Radiohead
TITLE / The King Of Limbs
LABEL / self-released /xl
DATE / 2011
TITLE / The King Of Limbs
LABEL / self-released /xl
DATE / 2011
[46-71]。以前紹介した盤"Hail To The Thief"。自分たちの道を自分たちで規定できるのは選ばれたものだけである。Radioheadは、現在、世界でその特権を与えられている数少ないビッグ・バンドである。とにかくでかい。もうでかすぎて、今何やってるのかわからないし、なんか追っかけようとか、次のリリースまだかなとか、 Thom Yorke今何してるかなとか、そんなことが気にならないぐらいである。地球の自転が僕たちの諸条件に対して、自覚されないように。それにしても僕は"In Rainbow"を持ってないんだったのだろうか、とかそのレベルで、不確定になってしまう。それでも、周回遅れで、一応本作を手にとって見る。で、比喩的にいえば、針を落とす。で、うーえーおーと思う。針を落とすというのはアイロニックな響きを持つ。物理的なメディアの終焉が、日に日に強固になっていくなか、AKB48のようなアプローチでもって物理化に箔をつけない限りは、もはや音楽は円盤に封入されている必要がなくなった。その複合的な価値を高めていた、往々にして矩形に描かれたデザインだって、物理的定着を必要としなくなった。重要なのは、「会いにいける」かどうか。本来的な人肌の物理性に、逆説的に接続する現代である。そんなこすり倒された指摘をしても恥ずかしくなるだけだけど。Radioheadは、本作において、そそくさと物理メディアを捨てた。本作のリリースは、ウェブ空間へと投げ込まれた。8thである。そんなことが、そんなわがままが、あるいは、そんな現在のマーケットを考えてある種自明な方法論を取れるのがRadioheadくらいってのが、音楽の進化をとめているのかもしれない。利益は、中抜きされて、作家に届く。そんな産業構造がいま、物理メディアの世界で、適切化しかけている(広告産業ってのも厄介だ。Radioheadはそれさえも、前情報をなんら漏洩させることなく、本作をぱんと示した)。僕たちは、デジタル・データの海の中で、グレッグ・イーガン描く世界のように、いつか「ディアスポラ」することに恐れおののきながら、あるいは、その朽ちることのない魂の広がりに焦がれながら、生きているんだ。関係ない話だけど。で、今回のRadioheadである。40分に満たない内容で、表面上は、"Kid A"でみせた賛否両論の(個人的には圧倒的な賛の)革新を超えるものではない。中身はより洗練されているのかもしれんが。でも、やっぱり、Radioheadの聴いたことがない曲が鳴るだけで、なんか、ぞわーとくるし、おーと思う。赤ちゃんのような感覚である。その程度にRadioheadは鳴らしてくれている。ラストM8の未来系クラウト的なつくりも、決して新しいものではないし。ネットレビューも対して評判がよいわけではない。無味乾燥で、期待はずれ。そんな感じである。このクオリティーを出してもそういわれてしまうRadioheadの地球感にただただ唖然とする。もちろん、僕も決して本作に打ち震えて、数日飯が食えないほどの衝撃を受けるほどではないのだが。それでも、やっぱりRadioheadは、きちんとフォークとナイフを使って食事をしている。よく出来すぎているただのRadioheadの1枚なのであった。いい加減何を書いてるかわからないけど。