The Beatles : S/T
ARTIST / The Beatles
TITLE / S/T
LABEL / apple records / emi records
DATE / 1968/1998
TITLE / S/T
LABEL / apple records / emi records
DATE / 1968/1998
1797。Richard Hamilton死去にあわせて本作をレビューするというのも、失礼な話かもしれない。Hamiltonにそれほど思い入れもないし。しかし彼が、本作を真っ白にしてくれたことで、多少なりともポピュラー音楽史の色合いは美しくなった。通称《White Album》。"Revolver"、"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"、"Magical Mystery Tour"と続いてきたサイケデリックな視覚性を見事に無効化し、新しい方向性を提示している。完結に。解散に向けた方向性を。The Beatlesを偏愛するLサイドのベストは本作である。僕は中学時代にナンバリング付きの50万枚限定30周年記念盤を買った。さすが天下のThe Beatles、50万枚限定という強気。ちなみに僕のitunesに入っているThe Beatlesの盤は本作だけである。僕も本作を思い出とともに偏愛する。The Beatlesが初めて自身のレーベルからリリースした意欲作であるとともに、プロデのGeorge Martinの反対を押し切って詰め込みまくった2枚組。メンバのなかでHarrisonの存在感も増し、本作ではClaptonを引き連れた'While My Guitar Gently Weeps'を含めて4曲を制作している。Ringo Starr初のフル自作曲も1曲ある。それだけ軋轢が増したともいえるかもしれない。本作は、そのボリュームから雑多な曲の羅列と受け取られ、前作のコンセプチュアルな構成もあいまってか、裏名盤的な扱いを受けがち(全力で気のせいかも知れない)だが、はなはだしい誤解である。The Beatlesのベスト盤である、本作は。レコード会社の都合や売り上げのためにリリースされた糞シングル集ではない。全曲書き下ろしで、全曲シングル級という奇跡をやってのけた盤なのである(ジングルっぽいのもあるけど)。今聴いてもニヤツキと涙が止まらない。才能しかない。ただの才能しかない。しかも、がちがちに作らず、ちょっと崩したりするから、手がつけられない。ロックンロールから、バラードから、レゲエから、カントリーから、ブルースから、メタル派生から、オーケストラから、ミュージック・コンクリートから、とにかく全部を俺たちはやってのけれるというという自負。そしてそれを見事に売りさばくというアイドル性。僕たちのThe Beatlesはそれ以後にチリひとつ残さずに去っていった。8年足らずで、それ以後の音楽家たちから夢を希望を奪い去った罪人たち。すべての出発点であり、終点。彼らが残した唯一のベスト盤、それが本作である。超絶モンスター傑作。